相続が発生したら必要な「名義変更」にはこんなにも種類がある!

相続が発生したら必要な「名義変更」にはこんなにも種類がある!

財産を所有していた人が亡くなると、その財産は相続財産として相続人となる親族が引き継ぐことになります。
遺産分割協議書などを作成し、誰がどの財産を相続するのかが確定すれば、相続に関する手続きはひとまず完了します。

しかし、相続財産に土地や建物などの不動産や、銀行や証券口座などの「名義変更が必要な財産」が含まれている場合には、これらの名義変更手続きを完了しなくてはなりません。

特に、不動産に関しては相続登記という形で第三者に対しても権利を主張できる形にしておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性がありますから注意が必要です。
今回は、相続に関して必要になる名義変更の手続き方法について具体的に解説します。

1.不動産

相続に関する不動産の名義変更は、一般的に「相続登記」と呼ばれます。
不動産の所有権は相続人が確定した時点ですでに移転しているのですが、その移転した所有権を第三者(相続に関わる親族以外の人)に対しても主張するためには法務局で登記という手続きを行う必要があるのです。

1-1.相続登記

相続に関する手続き(相続放棄や相続税の申告)には親族の方が亡くなってから一定期間の期限内に行わなくてはなりませんが、この相続登記に関しては法律上定められた期限というものが存在しません(放置していても罰則が生じるようなことはありません)。

簡単にいうと、相続登記は相続税の申告などと違って「やってもやらなくても誰からも文句を言われることはない」ということなのですが、相続した不動産を売却したい場合や、担保に入れてお金を借りたりしたい場合には相続登記が行われていないと取引が中断してしまうなどの弊害が生じる可能性があります。

1-2.相続登記の必要性

また、自分以外の相続人が無断で不動産を譲渡・売却してしまったというような場合に、最悪の場合は不動産を引き渡さなくてはならない可能性がありますから注意が必要です。
というのも、登記されていない不動産というのは、遺産分割後に取引関係に入った第三者(親族が勝手に売ってしまった取引相手など)に対して権利の存在を主張することができないのです。

無用のトラブルに見舞われないようにするためにも、相続人が確定したら出来るだけ早く相続登記も完了しておくのが望ましいと言えるでしょう。

2.不動産の相続登記手続き

実際に不動産の相続登記を行う際に必要な手続きについて理解しておきましょう。
不動産の相続登記は、法務局という役所で行います。相続登記を行うためには、以下のような書類が必要になります。

・遺産分割協議書
・不動産の登記事項証明書(法務局で取得)
・亡くなった人の住民票の除票(市役所で取得)
・物件を実際に相続する人の住民票(市役所で取得)
・亡くなった人の戸籍謄本(市役所で取得)
・相続人となる人全員の戸籍謄本(市役所で取得)
・相続人となる人全員の印鑑証明(市役所で取得)
・物件の固定資産評価証明書(市役所で取得)
・遺言書(ある場合)

なお、遺言書については公正証書遺言以外の方法によって作成されている場合には、事前に家庭裁判所の検認(遺言書の内容を公的に確定する手続き)を経ていなくてはなりません。

2-1.期間

不動産の相続登記(名義変更)を法務局に申請してから、実際に名義変更が完了するまでには1週間程度が必要になります。
ただし、相続登記を行うためには上で説明させていただいたような必要書類をまずそろえなくてはなりませんから、準備期間を含めて1ヶ月〜3ヶ月程度は見ておくと良いでしょう。

親族間で連絡を取るのが難しいなどの事情がある場合には、弁護士や司法書士といった法律の専門家に間に立ってもらうことでスムーズに相続登記の手続きを進めることができます。

2-2.費用

相続登記を行うためには、法務局で以下のような費用を支払う必要があります。

登録免許税:相続した不動産の固定資産評価額×0.4%
各種書類(戸籍謄本や登記簿謄本など)の取得費用:数千円程度

なお、相続登記に関する手続きを専門家(司法書士や弁護士などの法律家に依頼します)に代行してもらう場合には、専門家に支払う費用が必要になります。
専門家に相続登記を依頼した場合の費用は10万円〜20万円程度となるのが相場です。

相続登記は役所の細かいルールに従って適切に行わないと受理してもらうことができないほか、不備があった場合には後で売却等を行う際にトラブルに発展することもあります。
専門家に依頼して相続の段階できちんと手続きを完了しておくことにはメリットがあると言えるでしょう。

3.自動車

亡くなった人が自動車を所有していた場合にも、名義変更が問題となります。具体的に問題となるのは、相続時には名義変更を行なっていなかった場合です。

名義変更を行なっていないと、その自動車を売却する際に中古車業者などから「引き取りをするためには相続人の許可がいる」といった形で遺産分割協議書などの提出が必要になり、手続きが複雑になる可能性があります。

自動車に関しては不動産のように名義変更が必ず必要になるというケースは少ないですが、その後の売却などが生じた時に備えて名義変更を行なっておくのが良いでしょう。

3-1.相続放棄をしたい場合の注意点

亡くなった人に財産がほとんどなく、借金だけがあるというような場合には、相続人となる人は相続放棄という手続きを行うことによって借金を引き継ぐ義務を免れることが可能になります。
相続放棄は、相続のあったことを知ってから3ヶ月間の間に家庭裁判所に対して申述することによって行いますが、遺産に自動車が含まれる場合には注意が必要です。

というのも、相続財産に含まれる自動車を、相続人となる人が売却してしまったような場合や、継続的に乗り続ける意思があるものとみなされた場合には、相続を承認したものとして相続放棄ができなくなってしまうことがあるためです(これを法定単純承認と言います)。

3-2.単純承認

そのため、相続放棄を行う場合には相続発生後には自動車などの財産を勝手に換金したり、むやみに使用することは絶対に避けなくてはなりません。
駐車場などに車を保管している場合には駐車場代が発生し続けてしまうなどの問題が生じますから、借金の債権者に差し押さえをしてもらうよう促すなどの手段を講じる必要があります。

相続放棄をしたくても、安易に行動してしまうと上のように単純承認とみなされてしまうことがありますから、判断に迷ったような場合には弁護士などの専門家にアドバイスを求めるようにしましょう。

4.銀行口座や証券口座

預貯金などの銀行口座は相続財産としてもっとも一般的なものですが、金融機関側が厳格に本人確認等を行なっている分、名義変更に時間がかかる場合があります。
相続財産が金額的に大きい場合には、それに応じて発生する相続税の負担も大きくなります。

相続税はすべて現金で納付する必要がありますから、「相続した銀行口座のお金から相続税を支払おう」と思っていたら、口座の名義変更に時間がかかってお金が引き出せない…という事態になってしまう可能性もあります。

相続税は期限までに納付を行わないと加算税延滞税などの形でペナルティが課されてしまいますから注意しておきましょう。

4-1.銀行口座

銀行口座に入金されているお金は、相続が発生したこと(つまり元の所有者が亡くなったこと)を金融機関側が把握した時点で凍結されてしまいます。
口座の凍結というのは、簡単にいうと「口座に対しての入金や出金が一時的にできなくなる」状態のことをいいます。
相続が生じたことによって凍結された口座からお金を引き出せるようにするためには、①相続預金の払い戻し手続きや、②名義変更といった手続きを完了する必要があります。

①相続預金の払い戻し

相続預金の払い戻しとは、名義は以前の所有者のままで、親族が入金されているお金を引き出すための手続きを言います。

相続預金の払い戻しを行う場合、まず金融機関に元の所有者が亡くなったことを連絡します。
金融機関に元の所有者がなくなったことを連絡する際には、以下のような書類を提出する必要があります。

・亡くなった人の除籍謄本
・窓口に行く人の戸籍謄本
・窓口に行く人の印鑑証明

金融機関は確認し次第、口座を凍結しますから、その時点での預金残高を証明する書類を発行してもらうようにしましょう(預金残高証明書という書類です)
預金残高証明書を取得したら、それに基づいて親族間で遺産分割に関する協議を行います。

遺産分割協議では最終的に遺産分割協議書という書類を作成することになりますので、その遺産分割協議書を持って改めて金融機関に出向きましょう。

その際、以下の書類を提出して払い戻し請求を行います。

・遺産分割協議書(相続人全員の記名押印が必要)
・相続人全員の印鑑証明
・払い戻し依頼書(銀行窓口にあります)
・預金通帳

※ただし、遺言によって財産を取得した場合には以下のような書類が必要になります。
・遺言書の写し
・公正証書遺言以外の場合は検認調書の写し
・遺言執行者がいる場合、その人の印鑑証明

払い戻しの手続きが完了すると、銀行は口座の凍結を解除して、相続人の代表となる人(払い戻し依頼書で指定します)の口座にお金を振り込んでくれます。

②名義変更

払い戻しが完了したら亡くなった人の口座のお金を引き出すことが可能になりますが、その後ももとの口座を使い続けたい場合には名義変更の手続きを行います。

亡くなった人の口座をそのまま使い続ける必要があるケースというのは限られていますが、亡くなった人が個人事業主として売上入金用の口座として個人の銀行口座を利用しているような場合には名義変更を行うことも考えられます。

名義変更に必要になる書類は払い戻し手続きのものとほぼ共通していますから、払い戻しの手続きと並行して名義変更を行うと良いでしょう。

4-2.証券口座

亡くなった方が株式投資やFX取引、投資信託などを利用していた場合には、これらの財産の名義変更手続きも必要になります。
証券口座の中のお金や財産を引き出すための手続きは基本的に銀行口座の場合と同じですが、金融機関によって手続き方法が微妙に異なる場合があります。

具体的にどのような書類が必要になるかについては個別に金融機関に問い合わせるようにしましょう。

5.まとめ

今回は、親族から財産を相続した場合に必要になる名義変更の手続きについて解説させていただきました。
相続をめぐっては親族同士で意見が食い違ってしまうことも多く、名義変更がされていないことが原因で思わぬトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

特に土地や建物などの不動産に関しては財産的な価値も大きく、トラブルに見舞われてしまった時の経済的な損失も大きくなることがありますから、相続人が確定した時点ですみやかに相続登記の手続きを完了しておくのが望ましいです。

相続登記に関しては、司法書士や弁護士といった法律の専門家に相談することで適切な処理の仕方を教えてもらうことができますから、必要に応じてアドバイスを受けるようにしましょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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